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Bankers Talk Simply About ヨノナカ

お金、何円持てる?
~持続可能な発展:格差編~

2023/9/15

お金、何円持てる?~持続可能な発展:格差編~

私の趣味というか日課の一つが筋トレなんですが、『ダンベル何キロ持てる?』という女子高生が筋トレをがんばるアニメが、2019年に放送されました。ダンベルと言えば、ダンベル・カールという上腕二頭筋を鍛えるトレーニングがイメージしやすいですが、「何キロ持てる?」と問われれば、私の場合、がんばって20kgぐらいです。チャレンジしたことはないんですが。たぶん、です。

かつて、お金は、石やお米だったそうなので、私が外出時に自力で持ち歩けるお金の量は、背負ったとしても、やはり20kg程度が関の山というか、それだとほとんど歩けません。しかし、今ならば、どうでしょう。クレジットカードやデビットカードを持ち歩けば、いくらでも(※1)、お金を持ち歩けますし、銀行に預けておく限りにおいては、やはりいくらでもお金を所有することができます。「お金、何円持てる?」と聞かれれば、「なんぼでも」と答えられます。
※月間の使用限度額にはご注意ください。

世界一の富豪

実際、アメリカの経済誌フォーブスが発表した2023年の「世界長者番付」によると、フランスの高級ブランドグループ、ルイヴィトン(以下略)のアルノーCEO(最高経営責任者)の推定資産保有額は、なんと約28兆円ということでした。四国銀行がお預かりしている預金の総額は、2022年12月末で約3兆円ですので、たった一人で、その10倍近い資産を保有しているということです。
 また、フランスの著名な経済学者であるトマ・ピケティ氏(『21世紀の資本』著者)が運営する世界不平等研究所(World Inequality Lab)によれば、世界の富裕層の上位1%(約8千万人)によって、世界の資産の38%が所有されているそうです。アンバランス。
(ちなみに、同誌の日本長者番付によれば、ファーストリテイリング社(ユニクロの会社)の柳井会長が3兆円でトップだそうです(2022年))

1日1.9米ドル(1米ドル=140円前提で約266円)以下

一方で、貧困削減のために途上国への資金支援等を行っている世界銀行という国際機関が、「国際貧困ライン」というものを設定していて、1日1.9米ドル以下の暮らしを「極度に貧しい(extreme poverty)」と表現しています。そして、SDGsのゴール1では、そうした暮らしを余儀なくされている人をなくすことが、目標として掲げられています。また、「極度に貧しい」状態に置かれている人々は、2018年時点で、6.5億人以上いるとされており、そのうちの6割以上が、アフリカ(サハラ以南のアフリカ)の国々で暮らす人たちです。

相対的貧困

1日1.9米ドル以下ということではなくとも、ある国において、「平均的な」生活・所得水準に対して、相当に低い所得水準(正確には「中央値の半分以下」)にあることを「相対的貧困(relative poverty)」と表現し、日本の場合は、世帯当たり年収が127万円以下にある状態を指します(2019年)。そうした状況に置かれている家庭は、日本全体の15%程度あり、日米欧等先進38ヶ国(OECD(経済協力開発機構)加盟国)の中では、7番目に高い水準で、富裕層が多く、格差も大きいイメージがあるアメリカをも、僅かながら上回っています(2021年)。日本もアンバランス。

お金、何円持てる?~持続可能な発展:格差編~

格差という問題

格差がある、ということは、よくわかりました。極度に貧しい状態にあれば、食べ物にも困るであろうことは、容易に想像がつきますので、緊急に解決されるべき問題です。一方で、相対的貧困については、各国の置かれた事情、格差の程度等、いくつも論点があります。難しい問題ですので、今日は、詳しく立ち入ることはしません。
 ただ、環境問題と同様で、この丸い地球、つながった世界において発生しているアンバランスを放置してしまうことは、倫理的な観点のみならず、経済合理的にも、特にリスク管理の観点からも、非常に問題があると認識されています。

 「世界経済フォーラム」という国際機関が毎年発行している「グローバルリスク報告書」では、今後10年のリスクについて世界の経営者に尋ねると、その7番目に「社会的結束の浸食と二極化」という、ややわかりにくい表現ではありますが、経済的格差が、社会の分断を招いてしまい、それが犯罪や、テロ等につながっていき、社会を不安定化させてしまうリスクが懸念されています。世界が平和・安全であって初めて、円滑な経済活動が可能となります。

※貧困と犯罪についてご関心のある方は、大阪大学の大竹文雄教授らが書かれた「失業率と犯罪発生率の関係:時系列および都道府県別パネル分析」(2010)など、ご参照ください。
https://www.osipp.osaka-u.ac.jp/archives/DP/2010/DP2010J007.pdf

格差の何が問題か

ヒトの身体も、世界経済も、アンバランスを放っておくと、その負荷がかかるところに、問題が発生します。二の腕ばかり鍛えていると、肩や前腕などとのバランスが崩れ、思わぬ怪我につながる恐れがありますが、世界経済においても、かつては、共産主義が世界の「持たざる者」を強く惹きつけてしまったように、持てる者ばかりが、どんどん富んでいくようなヨノナカは、持続可能ではないと考えられています。

今度こそインパクト

環境問題や経済格差の問題など、人間、それも一部の人間が豊かになった結果として生じている様々な問題について、経済発展を犠牲にすることなく解決していこう、という動きがSDGsであり、脱炭素なのですが、次回は、そうした問題に共通のモノサシとして重視されている「インパクト」という考え方について、今度こそ、ご紹介致します。

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