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レジリエンスとは

レジリエンスって何?レジリエントな人や組織になる方法をわかりやすく紹介

2022/11/2

レジリエンスって何?レジリエントな人や組織になる方法をわかりやすく紹介

近年、企業や組織でも注目を集める言葉「レジリエンス」をご存知でしょうか?

レジリエンスは個人や企業などさまざまな場面で用いられる言葉で、主に「逆境や困難に対する回復力・適応力」を意味します。つまり、レジリエンスを高めることで、逆境や困難に負けない力を手に入れることができるのです。

レジリエンスという言葉は、個人の資質や能力としてだけでなく、組織や企業における重要な要素としても注目を集めてきています。レジリエンスが注目されるようになった背景として、以下2つの出来事が大きく関係しています。

  • レジリエンスが2013年の世界経済フォーラムのメインテーマとなった
  • アメリカの大手出版社がレジリエンス を「2021年の言葉」として選んだ

まず、レジリエンスが世界的に注目されるようになったのは、2013年の世界経済フォーラム(ダボス会議)で「レジリエント・ダイナミズム」がメインテーマとなったことがきっかけです。
このフォーラムをきっかけに、リスクに負けず柔軟に対応していくための力としてのレジリエンスの重要性が、世界中の企業に認知されたのです。
また、海外では1年に1度、大手出版社が「今年の言葉」を発表しているのですが、2021年にはThrive Global ファウンダーの Arianna Huffington と Forbes によって、レジリエンスが「2021年の言葉」に選ばれました。
これまでは「pandemic (パンデミック)」 のような世相をあらわす言葉が選ばれていたこともあり、趣旨の異なるワードに注目が集まっていました。
レジリエンスを2021年の言葉として選んだ理由は、パンデミック後の未来を切りひらく言葉として相応しいと考えたためとされています。

新型コロナウイルス感染症の拡大や世界的な経済不安などもあり、不安定な現代社会を生き残る力としての「レジリエンス」が多くの人や企業に共感を呼び、注目を集めたといえそうです。

本記事では、レジリエンスの意味や定義、レジリエンスと似た言葉との違いを解説しつつ、レジリエンスを高めることのメリットや、高める方法をわかりやすくご紹介します。
個人としても、企業や組織としても、不安定な現代社会で強く生き抜いていくため、ぜひ今注目のレジリエンスについて詳しく理解していきましょう。

目次

■レジリエンスの意味や定義とは
 ・レジリエンスの物理的な意味
 ・レジリエンスの心理学的な意味
 ・レジリエンスの経営・組織における意味
■さまざまな分野で使われるレジリエンス
■レジリエンスと似た意味をもつ言葉とその違い
 ・レジリエンスとストレス耐性の違いとは?
 ・レジリエンスとメンタルヘルスの違いとは?
 ・レジリエンスとハーディネスの違いとは?
■高いレジリエンスが私生活や仕事にもたらす好影響
 ・個人がレジリエンスを高めることの好影響
 ・企業や組織がレジリエンスを高めることの好影響
■レジリエンスを高めて「レジリエントな人」になる方法
 ・目標を立て行動する
 ・マイナスの感情に向き合う
 ・客観的視点をもつ
 ・他者との関わりを大切にする
 ・心身ともに健康的になる生活習慣を心掛ける
■まとめ

レジリエンスの意味や定義とは

レジリエンスは、心理学をはじめとし、現在では経営学・組織論・教育など、さまざまな分野で用いられる言葉となってきています。まずは、分野ごとの意味や定義についてご紹介します。

レジリエンスの物理的な意味

レジリエンスはもともと物理学の世界で生まれた言葉です。「resilience」という英単語は

  • 回復力
  • 反発力
を意味し、物体の弾性(しなやかさ)を表す言葉として用いられています。
物理学の世界では、レジリエンスは「材料の安定性と外部衝撃に対する耐性」と定義され、「レジリエンスが高い=物理的に外的なストレス(圧力)に強い」という意味になります。

レジリエンスの心理学的な意味

心理学的意味としてレジリエンスを用いる場合、一般的には「逆境に適応し、乗り越えられる力」のことを指します。明確な定義はありませんが、ストレスを感じたときにうまく適応し、素早く回復する「力」もしくは、「適応プロセス」とされることが多いです。
主に心の回復力や、精神的な強さをあらわす言葉として、「レジリエンスが高い」、などと表現されます。適応力や回復力があることを形容する場合は、「レジリエントな人」のように用いられます。

例)

  • 他部署とのやり取りが多いこの業務は、レジリエンスが高い人が向いている
  • 立ち直りが早い彼は、まさにレジリエンスな人である
教育分野においても、個人における心理学的意味のレジリエンスが重要視されています。

レジリエンスの経営・組織における意味

レジリエンスは、企業や組織においても用いられるようになってきています。経営分野や組織論においてレジリエンスという場合、「リスクや変化に対応し、維持・改良・発展し続ける能力」を指すことがほとんどです。 よって、「レジリエンスの高い組織」という場合、「逆境や困難に負けない強さや回復力を備えた組織」という意味合いになります。逆境力があることを形容する場合には、「レジリエントな組織」のように用いられます。

例)

  • 困難な状況を乗りこえた弊社は、レジリエンスの高い組織といえるだろう

さまざまな分野で使われるレジリエンス

レジリエンスという言葉は、現在さまざまな分野で使われています。例えば、企業・環境・防災・観光・地域づくりなどです。
共通する認識としては、「リスクに対処できる力」がレジリエンスだということです。
「リスク」の内容は、分野ごとに異なります。防災分野であれば地震や津波などの自然災害が大きなリスクとなりますし、観光分野では感染症や人口減少の問題などがリスクになり得ます。他にも、テロや経済危機、高齢化や都市化といった問題がリスクとしてそれぞれの分野で取りざたされています。そうした分野ごとのリスクに対し、柔軟で強靭な対応力を高めていこうという意味の共通語として、レジリエントという言葉が使われるようになってきているのです。
「ハイレジリエントな社会を」「レジリエントな地域づくりを」等のスローガンをかかげる業界・分野も少なくありません。レジリエンスは脆弱性と反対の意味をもつ言葉のため、さまざまなリスクをひとまとめにし、脆弱性に対策しようという意味合いで「レジリエント化」が進められているのです。

レジリエンスと似た意味をもつ言葉とその違い

心理的ワードとしてのレジリエンスには、似た言葉もいくつかあります。ここでは、似た意味合いをもつ言葉とその違いをご紹介します。

レジリエンスとストレス耐性の違いとは?

ストレス耐性とは、ストレスに耐えられる「程度」をあらわす言葉です。精神的、あるいは肉体的ストレスに対し、強いか弱いかをあらわすときに用いられます。
一方、レジリエンスは「ストレスから回復する力」です。ストレスから回復するためにはストレスに耐えられる力も必要なため、ストレス耐性はレジリエンスを構成する要素のひとつといえます。

レジリエンスとメンタルヘルスの違いとは?

メンタルヘルスは直訳すると「心の健康」となります。メンタルヘルスという言葉を使う場面は、心の健康の重要性を訴えるようなときです。
一方、レジリエンスは心の回復力や柔軟性、強靭さをあらわす言葉で、レジリエンスを高めることはメンタルヘルスを改善することにつながっているといえます。

レジリエンスとハーディネスの違いとは?

ハーディネスはレジリエンスとよく似た概念であり、どちらもある意味「心の強さ」をあらわす言葉です。
ハーディネスとは、ストレスに強い人(高ストレス下でも健康でいられる人)がもっている性格特性のことをいいます。ハーディネスが高いと、ストレスをそもそもストレスと認知せず、他の人よりも感じにくいとされています。
すなわち、ハーディネスは心の防御力といえます。一方、レジリエンスは心の回復力であり、両者は似ているようで捉えている側面が異なるのです。
ストレスやリスクに対し、認知の時点で防御できる(ストレスを感じにくい)のがハーディネスであり、考え方や行動などによって包括的に対処し回復していく力がレジリエンスといえるでしょう。

高いレジリエンスが私生活や仕事にもたらす好影響

次に、レジリエンスが高いとどのような好影響(メリット)があるのかについて、「個人」と「企業・組織」に分けてご紹介します。

個人がレジリエンスを高めることの好影響

個人がレジリエンスを高めることで、以下のような好影響が期待できます。

  • ストレスにうまく対処できる
  • 感情をコントロールできる
  • 楽観的になれる
  • 柔軟な思考をもてる
  • 自分に自信をもてる
  • 困難を成長につなげることができる
ストレスに対処しやすくなり、生きやすくなるといえます。
人生には予期しない困難が訪れるものですが、レジリエンスを高めておくことでどんな困難にも心が折れることなく対処でき、前向きに前進していけるでしょう。

企業や組織がレジリエンスを高めることの好影響

企業や組織がレジリエンスを高めることで、以下のような好影響が期待できます。

  • リスクに対し冷静に対処できる
  • トラブルが起きても前向きに対処できる
  • さまざまな変化にも柔軟に対応できる
  • 組織としての人のつながりを強化できる
そもそも、企業や組織がレジリエンスを高めるためには、組織にかかわる人間、一人ひとりがレジリエンスを高めていく必要があります。
一人ひとりが逆境に負けない強い心を手に入れることができれば、それぞれが自分自身の人生を生きやすくなるでしょう。そのため、企業や組織のレジリエンスを高めることは、従業員一人ひとりのメンタルヘルス向上にもつながっているといえます。
企業の目標達成に向け、どんな逆境にも折れずに前進できる人間が増えれば、永続的な企業の発展につながることは間違いありません。

レジリエンスを高めて「レジリエントな人」になる方法

レジリエンスを高めるためには、考え方や行動、感情コントロールなど、総合的な能力を高めていく必要があります。
心理学の世界ではレジリエンスが高い人(レジリエントな人)には共通する特性・能力があるとされ、それらを高めるための方法も体系化されつつあります。
そこで、レジリエンスを高めるために今からできる考え方と行動を、下記にて具体的にご紹介します。

目標を立て行動する

レジリエンスを高めるために始めてほしいのが、目標を立て、目標達成のために行動することです。
もともとレジリエンスが高い人は、自己肯定感も高いことがわかっています。自己肯定感が高いことで、困難を経験しても「自分なら乗り越えられる」という自信になるのです。
目標達成のために行動する行為は、自己肯定感を高めることにつながっています。
ポイントは、実現可能な具体的目標(短期目標)を立てることです。
例えば、以下のように期間を区切り、より具体的な数値として計算していくと、目標を達成しやすくなります。

「1年後に10キロ痩せる」
 ↓
「1年後に10キロ痩せるために、1か月1キロを目標にする」
 ↓
「脂肪1キロを消費するためには7200kcal必要だから、1日240kcal食事を減らす」

小さな目標をひとつずつ達成していくことで、「やればできる」という自己効力感が生まれ、自信につながっていきます。こうした自信の積み重ねが、自己肯定感の基礎となり、心の回復力(レジリエンス)を高めることができます。

マイナスの感情に向き合う

レジリエンスを高めるためには、マイナスの感情とも向き合う必要があります。
マイナスの感情から逃げずに向き合うことで、自己肯定感を高めることができ、結果として現実的楽観性や精神的柔軟性にもつながっていきます。
そもそも、自己肯定感とは「"ありのままの"自分を受け入れる感覚」です。つまり、自己肯定感は単なる「自信」ではなく、「ダメな自分も、それも自分であると受け入れられる感覚」といえます。 困難に直面したときに、マイナスの感情を受け入れられない人は、困難から逃げ、そこに向き合うことから目を背けてしまいます。これは、レジリエンスとは真逆の行動です。よって、日々の暮らしのなかで、自分自身のマイナスの感情を認識し、それも自分であると受け入れることが、レジリエンス向上の土台として重要なのです。

客観的視点をもつ

レジリエンスを高めるために必要な能力である現実的楽観性や精神的柔軟性を手に入れるためには、客観的視点が大切です。
多くの場合、困難に心が折れてしまう状況では、客観的視点をもてなくなってしまいます。物事を主観的に考え、マイナスの感情に支配され、自らの思考によって大きなストレスを生み出してしまうのです。
ここでもしも客観的視点をもつことができれば、ストレスによるつらさや苦しみから抜け出しやすくなり、前に進むことができます。具体的には、自分の思考や感情に囚われていることにまず「気付く」こと。それから、自分自身の思考を書き出すなどして分析し、俯瞰で見るクセをつけていくといいでしょう。
客観的視点をもつことを習慣付ければ、楽観的・柔軟的に考えを変えられるようになり、レジリエンスも高まっていきます。

他者との関わりを大切にする

社会的生物である人間は、人との関わりによって感情や思考が大きく左右されます。よって、他者との関わりや信頼関係が、心の回復力であるレジリエンスにも大きく関係しています。
周囲に理解者がいなければ、困難に陥ったときにはひとりで苦しみを抱えることになりますが、理解してくれる人がいるだけで心は回復しやすくなるでしょう。
よい信頼関係を築くための具体的な方法として、以下を意識してみてください。

  • ちょっとしたことにも感謝を伝える
  • 相手に興味をもち、関わりを大切にする
  • 自分の弱い部分を隠さず見せる
  • 困ったときには積極的に人に頼る
普段から周囲とよい信頼関係を築けていれば、困難の際には存在が支えとなり、立ち直る力となります。

心身ともに健康的になる生活習慣を心掛ける

感情のセルフコントロールのためには、生活習慣も大切です。科学的・心理学的にも心と体のつながりは立証されており、健康的な生活がメンタルの安定をもたらすことがわかっています。
メンタルを安定させるための生活習慣としては、以下に気をつけるとよいでしょう。

  • 毎日の生活リズムを一定にする
  • 睡眠時間を十分とる
  • 運動習慣をつくる
  • バランスのよい食事を摂る
  • 喫煙をしない
  • 飲酒は適度に
困難に直面した際、感情に支配されずにコントロールできれば、立ち直りも早くなるはずです。

まとめ

レジリエンスとは、基本的には心の回復力のことを指し、困難に直面した際に立ち直る力のことをいいます。心理的ワードとして個人を対象に用いられることが多いですが、最近では企業や組織など、さまざまな場面で「リスクに対処できる力」という意味合いで用いられています。
レジリエンスは以下6つの能力で構成されており、これらを高めることで「レジリエントな人」になることが可能です。

  1. 自己認識
  2. キャラクター・ストレングス
  3. セルフコントロール
  4. 現実的楽観性
  5. 精神的柔軟性
  6. 信頼関係の構築
レジリエンスを高めていくことで、より生きやすく、逆境にも負けないメンタルを手に入れられます。組織においては、これからの不安定な社会を生き抜く力となるでしょう。
ぜひ本記事を参考に、個人や組織としてのレジリエンスを高めていってください。

なお、本サイト「四銀ルーム」では、世の中で話題となっているトピックスや、少し気になる経済情報をわかりやすくご紹介しています。
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(提供元:全研本社)

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