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日本は税金が安い国?タックスヘイブンって何?|明日から使える税金の雑学

2022/6/3

日本は税金が安い国?タックスヘイブンって何?|明日から使える税金の雑学

日本は、先進国では「税金の安い国」といわれていますが、シンガポールや台湾などほかのアジア諸国と比較すると、消費税・住民税・相続税・贈与税などが高く感じられるかもしれません。中には、税金の安い国への移住計画を練っている方もいらっしゃるでしょう。今回は、日本と世界の国々との税金の違いについて紹介し、税金が安い国に住むメリット・デメリットに触れつつ、日本で節税をしながらお金を貯めるコツも解説します。

目次

■税金が安い国
 ・シンガポール
 ・台湾
 ・マレーシア
 ・カナダ
■日本の消費税は高い?安い?
■税金が安いメリット・デメリットとは
■税金が安い国「タックスヘイブン」とは?
■税金が安い国に海外移住することは現実的?
■社会を支える納税を行う中でお金を貯める工夫を見つけよう

税金が安い国

一般的に「税金が安い」といわれる国は、どういった税制を導入しているのでしょうか。日本よりも低い税金を採用している国を4つピックアップし、各国の税制の特色を紹介します。なお、2021年12月時点の日本では、法人税が15%~23.20%、個人所得税が5%~45%、個人住民税が10%前後、相続税・贈与税が10%~55%です。

シンガポール

シンガポールの税制の特色として顕著なのは、「タックスリベート」という税制優遇制度がある点でしょう。タックスリベートとは、シンガポール政府が毎年決定する税金控除制度です。シンガポールの法人税は17%と低水準ですが、政府機関から認定を受けた企業については、さらに税率下がるという優遇措置もあります。その結果、低い税率に魅力を感じた企業が世界各国から集まり、シンガポールの経済発展に貢献しています。

また、住民税・相続税・贈与税がありません。シンガポールでは、英語が公用語ですが、中国語が飛び交うことも珍しくありません。世界的に話者人口の多い英語と中国語が通じる国という理由もあり、節税目的で移住する人が各国から集まる国としても知られています。

日本でいう消費税に当たる「財・サービス税」は2021年12月時点で7%。2022年~2025年の間に9%へ引き上げる案が検討されていますが、それでも世界的に見て低い水準となっています。

台湾

複雑な日本の税制に比べると、台湾の税制はシンプルで、かなりわかりやすく見えるかもしれません。例えば、法人税は12万台湾元以下が免税対象、12万台湾元を超えると17%がかかるというシンプルな仕組みです。また、台湾では消費税・付加価値税に代わる「営業税」があり、商品・サービスに対して5%の税率が課せられます。軽減税率のように、商品・サービスによって税率が変わることはありません。ちなみに、2021年には、期限付きですが「図書」の営業税が免除されることになりました。相続税・贈与税は10%~20%となっており、免税額も大きいため、日本よりも税金を抑えた相続・贈与ができる国の1つです。

マレーシア

マレーシアは、石油・天然ガスといった資源に恵まれているため、税金を安くできるという強みを持つ国です。過去に天然資源に頼りきりでは財政が不安定になりやすいため、財政を安定化させたいという狙いから、2015年に消費税が導入されましたが、「消費税撤廃」を掲げた政党が与党となり、2018年には公約通り消費税が廃止されたという経緯があります。代わりに、輸入や不動産売却益の増税・課税強化に乗り出しています。税金が低い国として魅力があるマレーシアは、消費税廃止のモデルケースになりうる国としても注目が集まっています。マレーシアの所得税に課せられる最高税率は30%と日本よりも低いうえ、住民税もありません。

カナダ

カナダには連邦消費税(GST)・州税(PST)・ハーモナイズド消費税(HST)という3種類の税金があります。商品・サービスを購入する際には、表示価格+GST(連邦消費税:5%)+PST(州税:州ごとに税率が異なる)か、表示価格+HST(ハーモナイズド消費税:GSTとPSTを合わせた消費税)を支払います。

カナダはしばしば「税金が安い国」として挙げられますが、それは、GST(連邦消費税)が7%から5%に引き下げられたという過去も影響しているでしょう。しかし、実際には州の違いで消費税率に5%~15%もの差があります。その理由は、連邦消費税(GST)に加えて、州の消費税(PST)が上乗せされるからです。

一方で、生活に必要な消費・サービス・医療費などは、どの州でも非課税あるいは税率0%となっています。カナダは、州によって日常必需品やサービスに課税される範囲が異なるため、移住時に税率を調べておくといいでしょう。

日本の消費税は高い?安い?

日本では、1989年から「消費税(付加価値税)」が導入されました。導入当時は3%でしたが、2019年までに3回の引き上げが行われ、10%(軽減税率8%)となりました。短期間で引き上げられた消費税が、負担に感じている方も多いかもしれません。とはいえ、2021年時点で日本の消費税率は10%と、世界的に見ると安い部類です。

欧米諸国では、日本よりも早い段階から消費税と同じような付加価値税が採用されています。付加価値税が最も高い国、ハンガリーの税率は27%。スウェーデン・ノルウェー・デンマークの税率は25%と、かなり高めに設定されています。特に北欧では、教育・福祉が充実している一方で、充実した公的サービスを維持するための税負担が大きい国が多いのです。

ヨーロッパ諸国は消費税が高いものの、軽減税率や非課税の対象となる商品も豊富です。日本では、新聞や持ち帰りの食品などが軽減税率の対象ですが、対象商品が少ないうえ、非課税ではなく、軽減税率の消費税として8%が課されます。

日本の消費税は、欧米諸国と比べると安いほうだといわれています。一方で、台湾が5%にとどまるほか、シンガポールでは7%、韓国では10%となっており、アジア圏と比べると高いほうです。また、日本はアジア圏の中では、所得税・住民税が高い国です。そのため、通常の日常生活の中では、全体的に税負担が大きく感じる方もいらっしゃるでしょう。

しかし、税金が安ければ、必ずしも良いとは限りません。道路・橋、上下水道、病院、教育機関、警察機関などの公的サービスは、税金によって維持されています。税金で公的サービスが賄うことができなくなると、道路や橋の整備のために通行料を取られ、医療費の負担も高額になってしまうでしょう。義務教育も平等に受けられなくなります。さらに、警察機関にも影響が生じ、治安の悪化や調査・逮捕のために、お金を払って警察官を雇うか自分で対処することになりかねません。日本では、税金によって、上下水道が整備され、水道水が飲める国として知られています。また、医療保険・年金・雇用保険など社会保険もアジア諸国の中では非常に高い水準となっています。豊かに安心して暮らせるために、税金は使われているのです。

税金が安いメリット・デメリットとは?

税金が安ければ、商品の購入やサービスの利用で個人の税負担が少なくなります。また、シンガポールが採用しているように、税負担に悩みを抱えている海外の富裕層や企業を招き、国の発展を促すことも可能です。税金が安い国には、さまざまな理由があります。例えば、豊かな資源に恵まれているマレーシアは、消費税を廃止しました。消費税を廃止するにあたっては複雑な背景がありますが、それでも財政が破綻しないのは、豊富な原油・天然ガスによる収入による部分が大きいでしょう。

シンガポールは資源が少なく、日本よりも人口が少ないため、海外からの投資を得る必要があり、あえて税率を安くする戦略を取っています。カナダは、財政が安定しているからこそ、税金が安く済んでいる国の1つ。GST(連邦消費税)を導入したのは1989年、財政の健全化を図るためで、当時は7%の税率が課せられていました。2008年には財政健全化を実現し、GSTの税率を5%まで落としています。台湾の付加価値税が低い理由は、国全体に「社会保障に頼らず自立しよう」という文化が根付いているからです。

このように、国によって文化や政策が異なり、それに合わせて税金の考え方も変わるのです。基本的に、付加価値税の税収は社会保障やセーフティネットの維持に使われます。付加価値税が高いことで有名な北欧諸国は、教育費や医療費を無料にするなど、いわゆる高福祉国家として社会保障制度を充実させています。税金の中でも、付加価値税が安いデメリットとしては、付加価値税が高い国よりも教育・福祉関連の自己負担が大きくなってしまうところでしょう。

税金が安い国「タックスヘイブン」とは?

タックスヘイブンは、先進諸国に比べて、所得税・住民税などの源泉課税や法人税・相続税・贈与税などが低い、あるいは免除されている国・地域のことです。ヘイブンは「天国(heaven)」ではなく「回避(haven)」という意味で使われており、名前の通り、「租税回避地」とも呼ばれています。

代表的な場所として、イギリス領ケイマン諸島、バージン諸島、ルクセンブルク、モナコ公国、アメリカのデラウェア州などが挙げられ、経済協力開発機構(OECD)は、35の国・地域をタックスヘイブンとみなしています。自国を発展させるために、海外から裕福層や企業を誘致する目的で税率を下げているケースが多くなっています。一方で、税率の低い国は資金洗浄(マネーロンダリング)や脱税といった犯罪の温床になりやすいため、国際的に問題視されています。

税金が安い国に海外移住することは現実的?

税金は安いほうがいいと感じるかもしれませんが、中には税金が安いゆえのデメリットも存在します。税金が安いからといって、生活コストが抑えられるわけではありません。裕福層や企業を誘致するために税金を抑えている場合は、その土地が発展するにつれて地価・物価が高くなりがちです。さらに、消費税・付加価値税が安くても、ほかの税金が高いというケースもあります。例えば、営業税(消費税・付加価値税)が5%の台湾では、土地所得で15%~45%、土地売買では地価の増加に合わせて20%~40%の税金が課せられます。

日本はしばしば「固定資産税が安すぎるのではないか?」と問題提起されるほど、不動産の所有にかかる税金が安い国です。土地・建物を所有・売買されている方にとっては、日本のほうが安く済むというケースもあるでしょう。また、OECD(経済協力開発機構)は、税逃れを助長するタックスヘイブンに厳しい目を向けており、税制の見直しを要求しています。さらに、多くの国がOECDの求めに応じ税制の見直しを行っているという現状もあるため、移住後も節税効果を享受し続けられるとは限らないのです。日本では、以前海外の子会社を使って節税をしていた企業が見受けられましたが、令和2年度(2020年度)に国際課税関係の改正があり、海外の子会社を利用した節税に対策が設けられています。

また、各国にとって税収は、国を維持するための重要な財源です。脱税が横行すると国の存続にもかかわるため、OECDは「CRS(共通報告基準)」という国産基準を設けました。CRSによって各国の税務当局が連携して口座情報の提供を行っており、脱税や租税回避に対処しています。タックスヘイブンへ移住するだけで租税回避をするのは、かなり難しいでしょう。移住をする際には、税率が低い・高いという視点にとらわれるのではなく、税金を低くできる理由や社会的背景にも注目することが大切です。

社会を支える納税を行う中でお金を貯める工夫を見つけよう

税金、特に消費税・付加価値税は、社会保障やセーフティネットの維持に使われています。国際的に見ると、日本は消費税が安い国です。その代わり、教育・福祉という面では公的サービスだけでカバーできない部分も多く、より良い教育・福祉を受けるためには、自分自身でまとまった資金を準備する必要があります。このような考え方は、「小さな政府」と呼ばれます。「小さな政府」とは、政府支出の金額が少なく、政府からは最低限のサービスだけが提供されている状況のことです。政府が大きな権限を持つのではなく、サービスの提供は民間に任せるというスタンスです。アメリカや台湾ほど顕著ではありませんが、日本も、現在は「小さな政府」に近い運用をしています。代わりに、日本では民間に向けた助成制度を充実させていますが、個人を支援する公的サービスは少ないため、教育・医療の分野では、家計をやりくりしながら費用を貯めなければなりません。

そのためにも、節約をしてコツコツ貯金をする、キャッシュレス決済でポイントをお得に貯める、税制優遇が受けられるつみたてNISAで投資信託を始めるなど、あなたに合ったお金の貯め方・増やし方を見つけることが大切です。そうはいっても、なかなか周囲には相談しにくいのが「お金」の話です。「何から始めたらいいの?」とお悩みの方は、以下のページから、ご自身に合ったキャラクターを選んで、人に相談しにくいお金の話をご覧いただくことができます。口座開設、貯金、キャッシュレス決済サービスの利用、つみたてNISAなどなど、あなたに合ったお金の向き合い方を探してみましょう。

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