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刈谷仁美さんインタビュー

アニメーター&イラストレーターの刈谷仁美さんに聞いてみました!

2022/7/28

昨年、「かわいい!」「さわやか!」「新鮮!」と話題になった、四国銀行の行員や野球部員を描いたポスター。イラストを描いてくださったのは、朝の連続テレビ小説『なつぞら』のオープニングアニメを手掛けた高知出身のアニメーター、刈谷仁美さんです。
ますますご活躍中の刈谷さんに、アニメの楽しさと奥深さについてお話を伺いました。

刈谷仁美さん作、四国銀行のポスターが繋いだご縁

――刈谷さんは、幼い頃から絵を描くのが得意だったのですか?

はい。絵は小さい頃から好きでしたね。漫画が好きで、小学校2年生くらいから『ちゃお』を愛読し、兄が読んでいた『コロコロコミックス』も欠かさず読んでいました。

絵が好きだったので、岡豊高校の美術コースに行ったんです。漫画がうまくなりたくて、デッサンの授業は頑張りました。「漫画・アニメ部」というゆる~いお絵描き部に入っていて、2年生の時には「まんが甲子園」に出場しました。

友達と絵を交換したり、描き方を工夫し合ったり、切磋琢磨しながら成長しました。今、アニメーターとして働いている友達もいます。

――まんが甲子園の大舞台に!何か印象に残っていることはありますか?

神奈川県から来ていた女の子がいて、イラストを見て「うまいな」と思って話しかけたんです。名前を聞いて、その後は特に連絡を取り合っていたわけではないのですが、その3~4年後にSNSで「この絵、見たことあるな」と思ったら彼女だったんです。そこでもう一度知り合うことができました。彼女もアニメーターになり、同じクリエーターとしてよい関係が続いています。

――漫画がお好きだとおっしゃいましたが、漫画家ではなくアニメーターを目指そうと思ったのはなぜですか?

高校生の時にジブリの『魔女の宅急便』を見て、アニメに興味を持ちました。
漫画家への憧れもありましたが、漫画は脚本やコマの見せ方など、絵を描く以外にも重要な要素があります。漫画家は、絵を描く仕事というよりも、自分の世界を描くことが主です。絵を描くのはそれに付随する仕事。私は、それはできないなって思ったんです。

漫画じゃない絵を描く仕事ってなんだろうと探していると、アニメーションがありました。
アニメは、絵を描くこと、絵を動かすことに特化しています。自分にもできるんじゃないか、できる人になりたい、アニメーションを作ってみたいと思い、東京にあるアニメの専門学校「東京デザイナー学院アニメーション科」に進学を決めました。

――憧れていた漫画家やアニメーターはいますか?

たくさんいます。エヴァンゲリオンでキャラクターデザインをしていらっしゃった、今は漫画家として活躍している貞本義行さんや、ジブリ好きなので宮崎駿さんも。ジブリのスタッフの方々も憧れでした。
東京デザイナー学院を選んだのも、卒業生のアニメーター・舘野仁美さんがスタジオジブリに所属していたことがきっかけです。『なつぞら』のお仕事も、舘野さんが声をかけてくださったんです。

――そうでしたか。『なつぞら』ではオープニングのアニメ以外にもいろいろ担当されたと伺っています。

はい。たくさんの人に見てもらえる絶好の機会だから、NHKの電波に乗っかろうと思って(笑)、注文されていないこともやりました。
1週間ごとの台本の表紙を全部描いたんですが、もともと台本の表紙の絵をご注文いただいていて、本来は1枚だけでよかったんです。好きな絵本作家が月刊誌の表紙で毎月新しいイラストを描いていて、自分も真似したいなぁと思っていたので、「金額はそのままでいいので毎週描かせてほしい」と申し出ました。
無料で請けたとしても宣伝効果が期待できる!という下心ありありです(笑)。宣伝広告費を絵で払うつもりで描きました。大変でしたが、やってよかったと思っています。

――刈谷さんは主にデジタルで描いていらっしゃいますが、高校生の頃は紙に鉛筆で描いておられたと思います。デジタルへの移行で、変わったことはありますか?

やっていることは変わりませんが、その場で再生できる便利さや楽しさがあります。パラパラ漫画と違って、動きを直感的に見ることができます。子どもの頃にこういうツールがあればよかったなぁと思いますね。本当に楽しいです。

でも、最近は仕事としてやっているので、絵を描くことが労働になってしまっている部分がありますね。たまにツイッターなどに描く落書きは楽しんで描いています。

――ツイッター上で公開されている絵も、動いているものとそうでないものがありますね。お仕事では、アニメとイラストどっちが好きですか?

イラストは個人で完結しますが、アニメは監督がいたり原画マンがいたり、いろいろな人が関わってやる集団作業です。どちらもいいところがあり、どちらも楽しいですね。アニメーターをやりながら、時々イラストの仕事を請けるという、今のスタイルが好きですね。

私はアニメーションに軸足を置くアニメーターなので、監督が考えた作品、表現したい作品を作る1スタッフです。あくまでも監督の作品であって、監督の要望に沿った作画をするのが仕事。作家性は表に出ません。
ですが、イラストは私個人の仕事なので、自分のスタイルをどんどん出していきますね。私っぽさは、色に出やすいかな。

――当行のポスターも、淡い水彩タッチの色が特徴的です。

刈谷仁美さん作、四国銀行のポスターが繋いだご縁

最初描いた人物はもっとかわいらしい感じの色合いでした。銀行のポスターであまり色気があるのはよくないんじゃないか、炎上したら嫌だなぁと思い、頬の色を薄くしたり、口紅の色を取ったり、少し派手さを抑えました。

高知の街中で見かけてくれた友達から「見たよ」と連絡があり、SNSにアップしてくれている人もいました。ポスターの前で写真を撮って投稿している人もいて、うれしかったですね。

――高知では、今年は3年ぶりによさこい祭りが開催されます。ポスターに続いて描いていただいたよさこいのイラストが、ようやくポスターとうちわになってお披露目できることとなりました。

高知の夏と言えば、よさこいです。友達とよく見に行きました。よさこい祭りにこのうちわを持った人たちがあちこちにいたらうれしいですね。テンションが上がります。

――四国銀行も出場するので、応援してくださいね!刈谷さんは北九州市の移住促進ポスターも手掛けていらっしゃいますが、当行のポスターとは異なるテイストですね?

四国銀行さんのポスターは、背景はほとんどなしで人物を際立たせてほしいというご要望をいただき、そのイメージで描きました。北九州市のポスターはその逆で、背景までゴリゴリ描いています。実際に訪れた場所を描いたので、愛着があります。北九州市のみなさんに愛着を持っていただけるとうれしいですね。

――いろいろなテイスト、タッチで展開できるのは、刈谷さんの技術の高さだと思います。 人物、背景など、何か得意なものや描きたいものはありますか?

私は人物やモブ(群衆)、植物を描くのが好きですね。人によってはアクションや炎、煙が好きな人もいます。動物ばかり描く人もいれば、形のないものを描く人もいて、いろいろなクリエーターがいて一つの作品ができ上っているんだって実感しますね。

アニメではキャラクターデザインが花形のポジションだというイメージがありますが、そこはあくまでも基盤であって、しっかりとした土台を作り上げるのは別のアニメーターだったりします。アニメーターは上下関係がなく、誰か一人でも欠けると作れなくなることもあるんです。お互いに支え合っている関係がとてもいいなと思います。

――アニメーターになって6年。アニメーターの方はどのようにして日々の研鑽を積んでいるのでしょう?また、刈谷さんご自身、成長したなと思うところは?

人によって違うと思うのですが、私は絵を描くのが好きなので、空いた時間があれば絵を描いています。監督によっては絵を描くなと言う人もいるんですが、描きたかったら描けばいいし、苦痛だったら描かなくてもいいと思います。アニメの世界には、絵を描く以外にもたくさんの仕事があるので、自分が興味のあることを研究すればいいと思います。
成長した点は‥‥。価格交渉ができるようになったことでしょうか(笑)。

――漫画やアニメを学んでいる学生さんや若い人たちに、メッセージをお願いします。

クリエーター業は、自分のやりたいことを思うがままにやるのが一番いいと思います。作品をどんどん作るのがいいんじゃないかな?自分が今やるべきこと、やりたいことをひたすら貫いて、納得がいく表現ができるまでやり続けていけばいいと思いますね。

クリエーターには正解もないし、成功もありません。ましてや、私自身成功しているとは思っていません。与えられた仕事をひたすらこなす、それがこの先も続いていきます。それが成功なのかといったら、そうでもないと思いますよ(笑)。

――私たち高知県民は、これからも刈谷さんのご活躍を楽しみしています。本日はありがとうございました。

【プロフィール】
刈谷仁美(かりや ひとみ)
1996年生まれ、高知県出身。アニメ制作スタジオ・TRIGGER(トリガー)での経験を経て、スマホゲーム『ブレイドスマッシュ』の作画監督を担当。2019年、NHK連続テレビ小説『なつぞら』でオープニングアニメの監督・原画・キャラクターデザイン他、タイトル題字のデザイン・作中アニメの制作・台本の表紙イラストを担当。東京アニメアワードフェスティバル2020の表紙画を務め、2020年にはハーゲンダッツ・アニメCMの作画も担当。

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