経済
宇宙界隈ちょっと気になる話
Vol.03 憧れの宇宙、その暮らしは?
2025/10/8
私たちは、広い宇宙の中に存在する小さくて美しい「地球」という星に住んでいます。
「宇宙に行ったことがある」「生きているうちに宇宙に行くぞ」という地球人が少しずつ増えてきた今、はるか彼方の星々に暮らす宇宙人たちは、「あの青く光る星に行ってみたい」と思っているかもしれません。あるいは、すでに地球に来たことがある宇宙からの訪問者もいるかも...。
身近になりつつある宇宙について、「気になること」を探ります。
技術の進歩により、人間が宇宙で暮らすことは現実に近づいています。前澤友作さんが、日本の民間人として初の宇宙旅行に行き、国際宇宙ステーション(ISS:International Space Station)に12日間滞在したのは、2021年のこと。その後も宇宙旅行に行く人、順番を待つ人は増えています。
地球を離れ、重力がない場所で生活するのは大変なことも多いようです。宇宙で唯一の生活拠点として、20年以上も宇宙飛行士たちを支えてきた国際宇宙ステーションの暮らしをのぞいてみましょう。
■宇宙の一日
地上から約400km離れたところにある国際宇宙ステーションは、地球のまわりを秒速7.7㎞の速さで回っています。そこで見る日の出と日没は、1日に16回。 朝・昼・夜の感覚がなくなるため、グリニッジ標準時間を基準にして24時間を過ごします。
朝6時に起床し、身支度をして朝食を食べ、地球と交信して今日のミッションの内容などを確認し、それぞれの作業にかかります。作業時間は一日8~9時間で、仕事が終わった後に体力維持のための運動を行い、夕食を取ってひと休みしたら21時30分に就寝という毎日。重力がかからない宇宙では、骨や筋肉、心肺機能が弱くなりやすいため、1日2時間、週6日間の運動が義務づけられています。
■宇宙での困り事
国際宇宙ステーションの中は、生命維持システムによって空気を作り出して循環させ、気圧、温度や湿度も一定に保たれています。テレビに映る国際宇宙ステーションの画像では、普通の服を着て、普通に生活をしているように見えますが、そこには重力がありません。
宇宙ではすべての物が浮き上がり、地上では経験したことのない、無重力ならではの困り事がたくさん起こります。自分の体も浮き上がり、そのまま眠ってしまうとどこかに行ってしまうため、寝袋を壁面に固定してその中で眠ります。
一番の困り事は、水。
水は球体になって中に浮くため、小さな粒が周辺の装置に入って故障を引き起こしたり、人の気管に詰まって窒息させる危険もあるからです。国際宇宙ステーションでは、蛇口から水を出すなんてことは命取り‥‥。お風呂はもちろんシャワーも使うことができず、洗面台もありません。顔や体の汚れは、ボディーシャンプーを含ませた濡れタオルで拭き取ります。
歯磨きは、口をゆすいだらペーパータオルやティッシュなどに吐き出すか、えいっ!と飲み込んでしまいます。吐き出す強さの加減も難しく、向井千秋宇宙飛行士は口の中にペーパータオルを入れる方法を思いついたそうです。
トイレは通常の洋式トイレと同様の形ですが、体が固定できるようになっており、排泄物を掃除機のように空気と一緒に吸い込む仕組みになっています。水不足の際に尿を飲み水に再生できる再生処理システム も備えています。ちょっとびっくりするような話ですが、宇宙で調達することができない水は、とても貴重なのです。
もちろん洗濯もできないので、日常の衣類は洗わなくても長く着られるように抗菌や防臭などの機能がある船内服を着用しています。
■おいしく進化する宇宙食
宇宙飛行士にとって、食事は最大の楽しみであり、大切な栄養源です。
人類が最初に宇宙に行った時の宇宙食は、チューブに入ったペースト状のものや、ひと口サイズの固形食でした。その後、お湯で戻して食べるフリーズドライ食品や、ふた付アルミ缶に入った食品などが開発されました。国際宇宙ステーションでは約半年という長期にわたって滞在するようになり、食事に飽きないようにさらに開発が進みました。レトルト食品や国際宇宙ステーションの調理器であたためて食べられる缶詰など、形態も味わいのレパートリーも広がっています。
未来の宇宙旅行では、旅行のグレードによってシェフが手掛けるコース料理なども提供されるかもしれませんね。
また、宇宙食には、
①包装が燃えにくいなど安全であること
②1年半以上の長期保存ができること
③食中毒などが発生しないよう衛生性が高いこと
④液体の飛び散りなど国際宇宙ステーション内に危険を及ぼさないこと
という条件があり、輸送や保管にも配慮が求められます。
■宇宙で役立つ便利グッズ
地球よりも制限が多い宇宙では、快適に過ごすためにさまざまなアイデアグッズが活用されています。
例えば、飲み物を飲むための特製ストローパウチ。柔らかいパックの中にストローが付いていて、その先には弁がついていて、吸うだけ中身が出てきます。マジックテープ付きトレーは、調味料、スプーンやフォークなどをマジックテープでトレーに固定することができ、食事の時に食べ物がふわふわ浮き上がらず落ち着いて食事ができます。
また、宇宙では引火の恐れや生命維持のために必要な装置に悪影響を与えるため、アルコール成分を含むものが厳禁。宇宙仕様として開発されたエタノール不使用のボディーシートなら、体を拭いてさっぱりと清涼感を味わうことができます。
さらに、歯を磨いた後、そのまま飲み込むことができる自然由来の食品成分だけで作った歯磨きや、塗って拭き取るだけの洗い流し不要のクレンジングウォッシュなども販売されています。
■休みの日の過ごし方
基本的に、土日祝はお休みですが、どうしてもやらなくてはいけない実験や作業がある場合は、休み返上で働いています。土曜日は、船内の掃除をしたり、通常業務以外の雑務を行うことも多いようです。
「今日はオフ!」という日は、ゆっくり朝寝坊をしたり、好きな映画を観たり、本を読んだり、窓の外に広がる宇宙の美しい写真や動画を撮るなど、思い思いに過ごして気分をリフレッシュしています。
休日とはいえ、外出することも家族と会うこともできないのが宇宙の暮らし。しかし、国際宇宙ステーション内でプライバシーが保たれるよう、クルー一人一人に電話ボックスくらいの大きさの個室もあり、一人の時間を過ごすことも可能です。家族や友人とテレビ電話で話す時間も設けられており、宇宙飛行士たちの楽しみになっています。
窓の外には、青く光る地球と無数の星。そんな宇宙の暮らしは、ステキとメンドクサイが混在するよう非日常の世界のようです。いつか宇宙で暮らすためには、無重力状態に慣れるための過酷な訓練が必要だということを覚えておきましょう!
次回は、「宇宙ステーション、どうやって作ったの?」の謎に迫ります。