経済
宇宙界隈ちょっと気になる話
Vol.06 ミッションは、「宇宙の物質を採取せよ!」
2026/4/22

私たちは、広い宇宙の中に存在する小さくて美しい「地球」という星に住んでいます。
「宇宙に行ったことがある」「生きているうちに宇宙に行くぞ」という地球人が少しずつ増えてきた今、はるか彼方の星々に暮らす宇宙人たちは、「あの青く光る星に行ってみたい」と思っているかもしれません。あるいは、すでに地球に来たことがある宇宙からの訪問者もいるかも...。
身近になりつつある宇宙について、「気になること」を探ります。
ISS(国際宇宙ステーション)では、宇宙飛行士たちが日々調査研究や実験を行っていますが、もちろん地球でも宇宙の謎を解く研究が進められています。その一つが、月や小惑星、火星などの天体から持ち帰る「サンプルリターン」です。地球上ではISSよりも高度な実験や解析が可能です。そこには、宇宙のなりたちや太陽系の起源、生命の起源などを探る、重要な手がかりがあるようです。
■月の石や砂からわかる、地球の歴史
人類が初めて採取した地球外の物質は、1969年にアポロ11号が持ち帰った「月の石」。その後もアメリカやソ連によって月の石が採取され、多くの研究者たちが解析に携わり、月の起源や成分を探ってきました。1970年の大阪万博ではアポロ12号が持ち帰った月の石が展示され、世界中の注目を集めました。2025年の大阪・関西万博でも、アポロ17号が持ち帰った月の石が展示され、長い行列ができました。
月の石や砂の中には、地球由来の成分を含んでおり、「もともと地球上にあった岩石である可能性が高い」と考えられているものもあります。スウェーデンの研究チームは、アポロ14号が持ち帰った石は、何らかの衝撃によって地球から岩石が飛び出し、月に衝突してできたクレーターの一部である可能性を発表しています。
また、アポロ15号が持ち帰った月の砂を調べている大阪大学の寺田健太郎教授によると、広い宇宙から見れば月と地球は一心同体であり、月の砂に含まれる粒状のガラスの成分を調べることで、月に火山活動が起こった時期やクレーターを作るような隕石の衝突があった時期などを知ることができると、研究を深化させています。
■無人探査機によるミッションで大きく前進
アポロ計画では宇宙飛行士が月面に降り立ち、直接サンプル(試料)を採取して持ち帰りました。6回の月面着陸ミッションで、合計約380㎏もの月の石や砂などのサンプルが地球に持ち込まれました。
その後は無人探査機が活躍し、1970~1976年のソ連のルナ計画では3回のミッションで約300gの月の石を採取しました。さらに、2004年にNASAの「ジェネシス」が太陽から高速で吹き出る粒子を採取、2006年に「スターダスト」が彗星周辺にただようダストの採取に成功し、帰還カプセルが貴重な試料を地球に届けました。これらの解析が、太陽系の起源と進化の解明につながり、宇宙探査は大きく前進しました。

■日本の「はやぶさ」「はやぶさ2」が大活躍!
日本では、小惑星探査機「はやぶさ(MUSES-C)」の開発が進められました。小惑星とは、太陽の周りを公転する天体のうち、惑星と準惑星およびそれらの衛星を除いた小さな天体のことで、木星の軌道周辺より内側にあるものを指します。
「はやぶさ」は、将来の太陽系の資源利用や天体と行き来するための飛行に必要な技術を開発し、実際に使用できることを実証するための工学技術実験衛星でした。
2003年5月に打ち上げられ、約20億㎞の距離を飛行し、2005年9月に小惑星イトカワに到着。11月にタッチダウンを行い、表面物質サンプルを採取。その後、地球との通信が断絶し、地上から電波を送りながら捜索して7週間後に通信が復帰。さらに、充電機能の故障という深刻なトラブルもJAXAチームの努力で克服し、2010年に地球に帰還。サンプルの入ったカプセルを投下し、地球に届けました。
はやぶさの後継機として開発されたのが、小惑星「リュウグウ」でのサンプルリターンをミッションとする小惑星探査機「はやぶさ2」です。リュウグウは、太陽系が生まれた約46億年前の水や有機物が今でも残されていると考えられており、太陽系の誕生と生命誕生の謎に迫る大きな一歩です。
2014年に地球を出発したはやぶさ2は、2018年6月にリュウグウに到着。2019年に2回のタッチダウンを行って試料を採取し、2020年12月にサンプルの入ったカプセルを地球に向けて投下。カプセルは6年間52億kmの旅を終えて大気圏に突入し、表面温度約3,000℃の環境に耐え、パラシュートを開いて無事にオーストラリアの砂漠に着陸しました。JAXAでは、予想を超える約5.4gの砂が採取されていたことに歓喜の声が上がりました。
■はやぶさ2は、今も宇宙で探査を継続中!
はやぶさ2は、そのまま拡張ミッションを遂行すべく旅立ち、次の目標である小惑星「1998KY26」を目指して航海を続けています。1998KY26は直径数十mの小さな天体で、自転周期は約10分という高速回転をしています。ここにターゲットマーカーを落とした時、どうなるのか?人類がこのような天体に到達するのは初めてのことで、非常に興味深い実験です。
このような小惑星は多く存在しており、地球に衝突して大きな被害を与える可能性もあり、はやぶさ2のような探査機を体当たりさせて衝突を回避する策も一案とされています。はやぶさ2が1998KY26に到着するのは2031年で、拡張ミッションは2040年頃まで続きます。昨年末には、2026年7月5日に小惑星「トリフネ」に接近してフライバイ(すぐそばまで近づき、通り過ぎながら観測すること)を行うと発表されました。これらの知見はさらに将来の探査機に生かされていきます。

■高知の研究者の叡智と熱い思いを載せて‥‥
実は、はやぶさ2の‟目"である「光学航法カメラ」と、衝突の様子を撮影する「分離カメラ」の開発・運用には、高知大学も関わっています。自然科学系理工学部部門(当時。現愛媛大学教授)の本田理恵教授がカメラ開発メンバーとしてプロジェクトに参加したこと、さらに研究室の学生らが着陸に適した場所を見つけるための画像解析を担当したことから、その多大なる貢献が認められ、JAXAはやぶさ2プロジェクトから感謝状が授与されました。
感謝状には、「はやぶさ2探査機は、2195日の宇宙の旅を無事に終えて、小惑星リュウグウの探査とそのサンプルの取得に成功しました。この成功に導いた、あなたの熱意と献身的な御尽力に、心より感謝いたします。」と記されています。
海と空の青さが自慢の高知県。はやぶさ2のカメラには、その先にある宇宙を目指す熱い思いが詰まっています!







